Kimi K3を第三者データで実測:Claude Opus 5に3.6pt差、速度は最遅
Artificial Analysis v4.1でKimi K3・DeepSeek V4 Flash・Qwen3.8 MaxをClaudeと比較。性能、速度、実費の代償を整理します。
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中国LLMが「Claudeを超えた」という見出しは、もう珍しくありません。ただ、その数字が自社ベンチマークなのか、第三者計測なのかで意味は大きく変わります。Claude CodeやAPIで使う場合、スコアだけでなく、回答が始まるまでの時間と1タスクにかかる実費も無視できません。
先に結論を書くと、Artificial Analysis v4.1の第三者データで見ても「中国LLMがClaudeに肉薄した」は本当です。気になるのはむしろ代償のほうで、それがモデルごとに全く違います。Kimi K3は知能スコアでOpus 5に3.6ポイント差まで迫る一方、速度は主要モデル中で最も遅い。DeepSeek V4 Flashは圧倒的に安く、応答開始も速いものの、知能・コーディングスコアは一段下です。Qwen3.8 Maxは有力な数字を出していますが、Artificial Analysisにはまだ収録されていません。
この記事は2本シリーズの性能編です。実際にいくら安くなるのか、Claude Codeからどう乗り換えるのかは、
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人工知能スコアではKimi K3がOpus 5のすぐ下にいる
Artificial Analysis v4.1のIntelligence Indexでは、Claude Opus 5が60.7、Kimi K3が57.1でした。差は3.6ポイントです。Kimi K3はオープンウェイトモデルとして、この一覧で最上位に位置します。
ただし、Kimi K3がClaude全体を上回ったわけではありません。Claude Fable 5は59.9、GPT-5.6 Solは58.9で、Kimi K3の上に並んでいます。Claude Opus 4.8は55.7、Sonnet 5は53.4なので、K3は旧世代のOpus 4.8を上回り、最新系の上位モデルにも接近した、という位置づけです。
同じAA v4.1の数値を並べると、序列は次のようになります。
| モデル | Intelligence Index | Coding Index |
|---|---|---|
| Claude Opus 5 (max) | 60.7 | 78.0 |
| Claude Fable 5 | 59.9 | 76.5 |
| GPT-5.6 Sol | 58.9 | 77.4 |
| Kimi K3 (max) | 57.1 | 76.2 |
| Claude Opus 4.8 | 55.7 | 74.3 |
| Claude Sonnet 5 | 53.4 | 71.5 |
| GLM-5.2 | 51.1 | — |
| DeepSeek V4 Flash 0731 (max) | 49.9 | 69.1 |
出典:Artificial Analysis v4.1の保存HTMLに埋め込まれたJSONを2026-08-04に機械抽出。Artificial Analysis
コーディングだけを見ると、Kimi K3の76.2はFable 5の76.5とほぼ同じです。Opus 5の78.0には届きませんが、「中国製のオープンウェイトだからコーディングは大きく劣る」という比較ではなくなっています。
この数字で注意したいのは、スコアの差がそのまま毎回の開発体験になるわけではないことです。コーディング指数で3ポイント前後の差を許容できても、回答開始まで1分近く待つなら、エージェントを何度も回す仕事では別のボトルネックになります。
Kimi K3は賢いが、待ち時間が実用上の代償になる
AAの速度中央値は、Kimi K3が36 token/秒でした。Opus 5は56 token/秒、Fable 5は74 token/秒、Sonnet 5は81 token/秒です。DeepSeek V4 Flashは113 token/秒で、K3の約3倍の出力速度があります。
Kimi K3は、単に文字の出力が遅いだけではありません。TTFTを含めて回答開始まで58秒、AAの1タスク所要時間は659秒でした。Opus 5は1タスク446秒なので、K3は知能スコアでは近くても、タスク完了までの時間では明確に不利です。Artificial Analysisの保存HTMLによる計測値です。
「賢いが待たされる」という評価は、ここから来ます。コードの修正案を一度読むだけなら待てるかもしれません。しかし、エージェントが調査、編集、テスト、修正を繰り返す場面では、1回ごとの待ち時間が積み上がります。Xでは「24 tok/sで、待ち時間が苦痛」という声もありますが、これは個別環境の体験談です。AAの中央値と同一視はできません。
Kimi K3は2.8TパラメータのMoEで、1回の推論で活性化されるのは104B、コンテキスト長は1Mです。大規模なモデル容量がそのまま速度につながるわけではなく、推論時の計算量、提供側の構成、思考処理の長さが実際の待ち時間に影響します。Kimi K3の大きさを見て高速化まで期待すると、数字との落差が出ます。Kimi公式リリース
なお、Kimi K3は「オープンソース」ではなく「オープンウェイト」と表現するのが正確です。Kimi K3 LicenseにはMaaSの収益条項があり、OSI承認ライセンスではありません。重みが公開されていることと、ソフトウェアライセンスとして無条件に自由であることは別です。
Terminal-BenchでもKimi K3は強いが、Opus 5には届かない
エージェント型のコーディングに近いTerminal-Bench 2.1では、AA独立計測のOpus 5が89.1%、Solが88.0%、Kimi K3が85.0%、Fable 5が84.6%でした。Sonnet 5は80.5%、DeepSeek V4 Flashは78.7%です。Artificial Analysisの計測値を基準にしています。
Kimi K3はFable 5をわずかに上回りますが、Opus 5との差は4.1ポイントあります。Moonshotが公表したKimi K3の88.3%とは差があり、複数の記事ではハーネス込みの可能性が指摘されています。nxcode.ioで紹介された比較と、AAの独立計測は出典を分けて読む必要があります。
ここは「Kimi K3がOpus 5超え」という見出しを確認するときの重要な箇所です。自社公表値の88.3と、第三者計測の85.0は同じ条件の数字ではありません。どちらか一方を間違いと決めるのではなく、ハーネス、プロンプト、試行回数、ツール実行条件が揃っているかを確認しないと、比較にはなりません。
DeepSeek V4 Flashは知能より費用と応答開始の速さで勝負する
DeepSeek V4 Flash 0731のIntelligence Indexは49.9、Coding Indexは69.1でした。Kimi K3の57.1・76.2、Opus 5の60.7・78.0と比べると、知能とコーディングの両方で一段下にあります。
その代わり、1タスク実費は0.027ドルです。Opus 5は2.34ドルなので、AAのIntelligence Index cost/taskではDeepSeek V4 Flashが約1/86です。安さを優先して大量に回す用途では、この差がスコア差を上回る場面があります。Artificial Analysis
応答性も特徴的です。DeepSeek V4 FlashはTTFTが1.3秒、回答開始までが18.9秒でした。Opus 5の回答開始は63秒です。出力速度の中央値もV4 Flashは113 token/秒で、Opus 5の56 token/秒を上回ります。Artificial Analysis
ここで注意したいのは、速いことと賢いことを混ぜないことです。DeepSeek V4 Flashは、難しい設計判断や複雑な修正をOpus 5と同じ品質でこなすモデルとして評価されているわけではありません。軽い調査、定型的なコード変換、試行回数を増やしたい処理では費用と速度が効きますが、難所を一度で抜ける前提なら別の評価になります。
DeepSeek公式のAPI価格は入力0.14ドル、出力0.28ドルで、cache hitは0.0028ドルです。OpenRouterで確認できる最安値は入力0.09ドル、出力0.18ドルですが、これはDeepInfraのfp4量子化経由です。提供経路と量子化条件が違うため、「安い=同じ品質」とは扱えません。OpenRouterおよびDeepSeek公式情報
Kimi K3はAPI単価も安いが、1タスク費用ではDeepSeekにかなわない
APIの表示価格だけを見ると、Kimi K3もClaudeより低価格です。Kimi K3は入力3ドル、出力15ドル、キャッシュ入力0.30ドル。Opus 5は入力5ドル、出力25ドル、キャッシュ入力0.50ドルです。OpenRouterとArtificial Analysisの保存データに基づきます。
しかし、AAの1タスク実費ではKimi K3が0.86ドル、Opus 5が2.34ドルでした。Kimi K3はOpus 5の約37%で、確かに安い。それでもDeepSeek V4 Flashの0.027ドルと比べると約32倍です。
この差は、APIの入出力単価だけでは見えません。思考を含むタスクでどれだけトークンを使うか、何回ツールを呼ぶか、やり直しが発生するかによって、実費は変わります。Kimi K3は品質をある程度維持したままOpus 5より安くしたい場合の選択肢であり、最安値を狙うモデルではありません。
| モデル | 1タスク実費 | API入力 / 出力価格 |
|---|---|---|
| DeepSeek V4 Flash | $0.027 | $0.14 / $0.28(cache $0.0028) |
| Kimi K3 | $0.86 | $3 / $15(cache $0.30) |
| Claude Opus 5 | $2.34 | $5 / $25(cache $0.50) |
1タスク実費の出典はAA v4.1、API価格の出典はAAおよびOpenRouterの保存HTMLです。DeepSeekのOpenRouter最安値は別経路の量子化モデルなので、上表の公式価格と置き換えて比較しないでください。
Qwen3.8 Maxは有力だが、AAの表に入れる段階ではない
Qwen3.8 Maxは2026年8月3日にGAとなったモデルで、2.4TのMoE、1Mコンテキスト、マルチモーダル推論を特徴とします。Alibaba Cloud独占供給で、API価格は入力2ドル、出力6ドルです。Alibaba公式リリース
ただし、2026年8月4日にArtificial Analysisを確認した時点で、Qwen3.8 Maxのモデルページは404となり、モデル一覧にも存在しません。したがって、Kimi K3やDeepSeek V4 Flashと同じAA表にQwen3.8 Maxのスコアを混ぜることはできません。
第三者計測として確認できるのはLMArenaです。Frontend Code Arenaでは1,668点で4位、Opus 5 Maxの1,705点に次ぐ位置でした。Vision Arenaでは2位で、Fable 5とは13点差です。LMArenaおよびArena関連の公開情報を出典としています。
Alibaba自社公表値では、Terminal-Bench 2.1が86.6、PaperBenchが93.0、SWE-bench Proが67.7です。Terminal-BenchではOpus 4.8の84.6を上回る一方、SWE-bench ProではFable 5の80.0に大差で負けています。これらはAlibaba自身のチャートによる比較であり、自社設計のQwenXXBenchを含みます。利益相反があるため、AAの独立値と同じ表に置くべきではありません。Alibaba公式チャート、Bloomberg、MarkTechPost
なお、Artificial Analysisに一時掲載されていたとみられる「Qwen3.8 Max II=53」という値は、2026年8月4日の確認時点でページ404かつ一覧未収録でした。一次確認できないため、確定値として扱いません。
比較表から読み取れるのは、三者三様の代償である
| モデル | 第三者データでの位置づけ | 実用上の代償 |
|---|---|---|
| Kimi K3 | Opus 5にIntelligence Indexで3.6pt差。Coding IndexはFable 5とほぼ同格 | 36 token/秒、回答開始58秒、1タスク659秒という遅さ |
| DeepSeek V4 Flash | Intelligence 49.9、Coding 69.1。速度と1タスク費用は有利 | Opus 5やKimi K3より知能・コーディング性能が下位 |
| Qwen3.8 Max | LMArenaでFrontend Code 4位、Vision 2位 | AA未収録。自社公表値は独立検証済みではない |

三者三様の代償: 何を得て、何を引き換えにしたか(数値は本文の表を参照)
Kimi K3とDeepSeek V4 Flashのどちらを選ぶかで迷うなら、判断点は「Opusに近い品質を取るか、失敗を許容して試行回数を増やすか」です。K3は性能面の距離が近い代わりに待ち時間が重く、V4 Flashは安くて速い代わりに、難しいタスクでは序列が下がります。
Qwen3.8 Maxについては、現時点で「性能が低い」とも「Claude超え」とも言えません。第三者計測が足りないからです。LMArenaの順位は有用な手がかりですが、AAのIntelligence IndexやTerminal-Bench 2.1と直接換算できる数字ではありません。確認できた事実は公表値とArenaの順位までで、実力の全体像はまだ推測の域にあります。AAに収録されたら、この記事の表に加えて検証し直す予定です。
私見:乗り換え判断はスコアではなく待ち時間と再実行回数で決まる
Artificial Analysis v4.1の範囲では、Kimi K3がClaudeに肉薄したという見出しは誇張ではありません。Opus 5との差3.6ポイント、Coding IndexでFable 5と0.3ポイント差という数字は、第三者計測でも確認できます。
それでも、私はKimi K3をOpus 5の単純な代替とは見ません。1タスク659秒という所要時間は、同じ品質を得るために待つ時間としては重い。時間を買うのか、API費用を抑えるのか、難しいタスクの成功率を優先するのかで評価は入れ替わります。
DeepSeek V4 Flashは、性能競争の勝者というより、安価な試行回数と速い応答開始を提供するモデルです。V4 Pro後継は「coming ASAP」とされているものの、2026年8月4日時点では未リリースなので、将来の改善を現在の比較に足してはいけません。DeepSeek公式X
今回の数字から確実に言えるのは、「中国LLMはClaudeに近づいた」だけではありません。Kimi K3は賢さと引き換えに待たされ、DeepSeek V4 Flashは品質と引き換えに安く、Qwen3.8 Maxは期待値と引き換えに第三者データが不足しています。三者を一つの勝敗表に押し込むと、いちばん重要な差が消えます。
実際のAPI費用、定額プランの比較、Claude Codeからの切り替え方は、
BlogClaude Code課金勢が従量に落とすと——月600タスクでなぜ86倍差か?Claude Codeの定額・週次上限と、中国LLMの定額/従量課金を月600タスクで比較。乗り換えの手間と現実的な併用策を整理します。→で扱っています。
注意点・制約
本記事の数値はいずれも各モデルの最大effort設定((max) 等)での計測値です。Artificial Analysisの1タスク実費と所要時間はIntelligence Index評価タスクに基づく値で、実際の開発ワークロードでは入出力トークン量・キャッシュヒット率・再試行回数によって変わります。OpenRouterの最安値はfp4量子化など提供条件が異なる経路を含むため、公式価格と同列には比較できません。数字は条件込みで読んでください。
どのように検証したか
2026-08-04に保存したArtificial Analysis v4.1およびOpenRouterのページから、埋め込みJSONデータをスクリプトで機械抽出しました(手写しによる転記ミスを避けるため)。自社公表値(発表チャート)と第三者計測(AA・LMArena)は、事実の重みが違うものとして本文中でも必ず区別しています。Qwen3.8 MaxのAA収録状況は、同日にモデルページのHTTPステータスとモデル一覧の両方で直接確認しています。Alibaba自社公表値は公式発表チャートから引用し、第三者計測と明確に区別して扱いました。
よくある質問
Kimi K3はClaude Opus 5を超えたのですか?
第三者計測(AA v4.1)ではIntelligence Index 57.1対60.7でOpus 5が上です。ただしオープンウェイトモデルとしては最上位で、Coding IndexはFable 5とほぼ同格まで来ています。
DeepSeek V4 Flashの「1タスク$0.027」は本当ですか?
AAのIntelligence Index評価タスクでの実測値です。Opus 5の$2.34と比べ約1/86ですが、これは評価タスク基準の値であり、実際のワークロードでは変動します。
Qwen3.8 Maxのスコアはなぜ表に入っていないのですか?
2026年8月4日時点でArtificial Analysisに未収録のためです。現時点の第三者計測はLMArenaの順位のみで、他のスコアはAlibaba自社公表値に限られます。
参考リンク
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この記事を書いた人
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