21k対64kのGPT-6 Astra:費用差2.19倍を生む出力量
GPT-6 AstraとClaude Fable 5.1は同じ$10/$50でも1タスク費用が2.19倍。出力トークンと待ち時間から使い分けを整理します。
こんにちは。9月に入って最初の週末ですね。今回は、値札がまったく同じ2つの AI モデルの「請求書のほう」の話です。
GPT-6 Astra と Claude Fable 5.1 は、どちらも入力$10・出力$50(100万トークンあたり。トークンは AI が文章を数える単位)です。ところが、評価の課題1つを解かせたときの費用は、Astra が$2.57、Fable 5.1 が$5.62でした。Fable 5.1 のほうが2.19倍かかっています。差を生んでいるのは知能スコアでも単価でもなく、1課題あたりに AI が書き出すトークンの量です。
ただし、安いからといって Astra を会話の相手に置くのは危ないです。最初の文字が返ってくるまで約7分43秒かかります。人が待たないバッチ処理や長時間の自動化なら Astra、画面の前で返事を待つ使い方なら Fable 5.1 も含めて別の選択肢を探す。私はこの切り分けで考えています。
数字はすべて第三者の計測から
どちらも同じ$10/$50なのに、片方だけ請求が膨らむのはなぜか。それを確かめたくて、Artificial Analysis(AI モデルを同じ試験で採点・計測して公開しているサイト。以下 AA)と OpenRouter(多くの AI モデルを1つの窓口で使えるサービス)に出ている数字を並べ直しました。
先にお断りしておくと、ここに出てくる値はすべて AA と OpenRouter の計測で、私が回したものではありません。皆さんの環境でそのまま再現する保証はなく、プロンプトの長さや effort(どれだけ考えてから答えるかの設定)によって変わります。一般化はできません。読み取れるのは「同じ単価でも、出力量が違えば請求は変わる」という関係の向きまでです。
単価もコンテキストも同じ、知能スコアは2ポイント差
GPT-6 Astra と Claude Fable 5.1 は、どちらもコンテキスト長コンテキスト長(Context Length)AI が1回のやりとりでまとめて扱える文章の長さの上限。トークン数で表す。詳しく →(一度に読み込める文章の量)が1Mです。OpenRouter のモデルページで確認できる定価も、入力が100万トークンあたり$10、出力が$50で一致しています。
知能スコアも大きくは離れていません。AA の Intelligence Index v4.2 では、Fable 5.1 が57、Astra が55です。差は2ポイントで、同じ最上位クラスの候補として並べるには十分近い数字です。OpenRouter のテキスト表示では、Astra の Intelligence Index は54.7、Coding Index は76.9、Agentic Index は51.6で、AA の55はその丸めにあたります。
10評価を合成した知能指標。左端が Claude Fable 5.1 (max with fallback) の57で、2本目が GPT-6 Astra (max) の55。黒はプロプライエタリ、青系はオープンウェイト(出典 https://artificialanalysis.ai/ 、2026-09-05 取得)
単価もコンテキストも同じで、賢さもほぼ互角。カタログを眺めているだけでは、API の予算をどちらに寄せるか決めにくい組み合わせなんですよね。
1タスクの費用は Astra が$2.57、Fable 5.1 が$5.62
AA の Cost per Intelligence Index Task は、Index の課題1つを解くのにかかった費用の加重平均です。ここでは Astra が$2.57、Fable 5.1 が$5.62でした。差額は1タスクあたり$3.05、比率にすると Fable 5.1 が2.19倍です。
1課題を解かせた実費の加重平均。棒の高さは右へ行くほど高く、右端の茶色3本が Anthropic 勢。GPT-6 Astra は黒い $2.57 の棒で、Claude Fable 5.1 は $5.62(出典 https://artificialanalysis.ai/ 、2026-09-05 取得)
| モデル | 1タスク費用 | Intelligence Index全体の総額 |
|---|---|---|
| GPT-6 Astra (max) | $2.57 | $4,064 |
| Claude Fable 5.1 (max with fallback) | $5.62 | $7,603 |
| Claude Fable 5 (with fallback) | $6.12 | $10,816 |
| Claude Opus 5 (max) | $4.21 | $5,546 |
| GPT-5.6 Sol (max) | $1.25 | $2,464 |
| GPT-5.6 Terra (max) | $0.81 | $1,714 |
ひとつ引っかかりやすいのが、AA のグラフで Fable 5.1 と Fable 5 が隣り合う似た色の棒になっていることです。今回の比較相手は Fable 5.1 の$5.62で、Fable 5 の$6.12ではありません。
費用差は21k対64kという出力量から生まれる
出力の単価が同じなのに請求額が変わるなら、見るべきは1課題あたりの出力トークンです。AA の Output Tokens per Intelligence Index Task では、Astra が合計21k、Fable 5.1 が64kでした。Fable 5.1 は Astra の約3.0倍を書き出しています。
1課題あたりに吐いた出力トークン。濃い下段が answer、淡い上段が reasoning。右端 Claude Fable 5.1 の64kに対し、左寄りの GPT-6 Astra は21k(出典 https://artificialanalysis.ai/ 、2026-09-05 取得)
| モデル | 合計 | answer | reasoning |
|---|---|---|---|
| GPT-6 Astra (max) | 21k | 13k | 8k |
| Claude Fable 5.1 (max with fallback) | 64k | 39k | 25k |
| Claude Opus 5 (max) | 56k | 32k | 24k |
| GPT-5.6 Sol (max) | 23k | 9k | 14k |
内訳は answer(答えそのもの)と reasoning(答える前の内部の思考)に分かれています。Astra は answer が13k、reasoning が8k。Fable 5.1 は answer が39k、reasoning が25kです。伸び率で見ると answer も reasoning も約3倍で、「思考だけが極端に長い」とも「回答文だけが極端に長い」とも言い切れません。
金額に効いているのは、増えた絶対量のほうです。answer は26k、reasoning は17k増えています。どちらも出力トークンとして課金されるので、単純な「思考料金」の話ではありません。Fable 5.1 は、答えの側にも大きく追加の出力を使っている、という構造です。
トークン比が約3倍なのに費用比が2.19倍に収まる理由は、この資料からは特定できません。入力やキャッシュの構成比がモデルごとに違うことは影響していそうですが、内訳までは公開されていません。それでも、同じ$50/1Mの出力単価で3倍近く書き出せば請求額が大きく膨らむ、という関係は崩れません。
Astra は安いが、返事が始まるまで約7分43秒かかる
費用だけで Astra を選ぶと、次は待ち時間で引っかかります。AA の End-to-End Response Time は、500トークンを出力し終えるまでの時間で、thinking(考えている時間)も含みます。この指標で Astra は469.4秒、そのうち thinking が463.7秒でした。計測対象23モデルの中で最下位です。
500トークンを返し終えるまでの秒数を、待ち時間の内訳ごとに積んだ図。右端が突出しており、これが GPT-6 Astra の469.4秒(出典 https://artificialanalysis.ai/ 、2026-09-05 取得)
thinking だけで463.7秒、つまり約7分43秒です。入力して少し待てば返ってくる、という会話の感覚ではありません。Fable 5.1 も thinking だけで266.5秒、約4分27秒なので速いとは言えませんが、Astra はそれよりさらに待たされます。
ところが、AA の Time per Intelligence Index Task では Astra が4.0分です。Fable 5.1 は9.5分、Claude Opus 5 は9.7分、GPT-5.6 Sol は4.3分でした。出力の速さも Astra は87 tok/s で、Fable 5.1 の69 tok/s を上回っています。
待ち時間を除いた書き出し時間だけを分単位で並べた図。ここでは順序が入れ替わり、GPT-6 Astra が4.0分と短い側へ移る(出典 https://artificialanalysis.ai/ 、2026-09-05 取得)
| 指標 | GPT-6 Astra | Claude Fable 5.1 |
|---|---|---|
| End-to-End Response Time | 469.4秒 | 273.8秒 |
| うちthinking | 463.7秒 | 266.5秒 |
| Time per Intelligence Index Task | 4.0分 | 9.5分 |
| Output Speed | 87 tok/s | 69 tok/s |
遅いのか速いのか、と混乱しそうですが、この2つの時間は矛盾していません。測っている区間が違うだけです。End-to-End は、500トークンの返事を1回返し終えるまでの時間です。Astra は最初の答えを出す前に長く考えるので、この指標では遅くなります。
Time per Task のほうは、Index の課題全体で文字を書き出している時間(decode)を、最初の文字が出るまでの待ち時間(TTFT)やその他のオーバーヘッドを除いて集計した数字です。Astra は1課題あたりの出力が21kと少ないので、最初の待ち時間を除けば短く収まります。「Astra は速い」「Astra は遅い」のどちらか片方だけを採ると、測定区間を取り違えることになります。
キャッシュ運用では Astra の入力費用が定価より大きく下がる
OpenRouter の GPT-6 Astra のページでは、加重平均の実効単価が入力$2.424、出力$50.15と表示されています。入力は定価$10を大きく下回り、出力はほぼ定価どおりです。
同じページには、キャッシュ(一度読み込んだ文章を再利用して安く済ませる仕組み)読みの単価$1.00と、OpenAI 90.9%、Azure 91.0%、Azure(US)96.4%というキャッシュヒット率も出ています。ただ、OpenRouter はヒット率の数え方や cache write の扱いを明示していません。これらの数字を掛け合わせて、実効単価の内訳を再現することはできません。
確実に言えるのは、長い文脈を何度も読ませる運用では、Astra の入力費用が定価から大きく下がっていることです。2026年9月5日の OpenRouter のトークン内訳でも、prompt は9.88B、completion は62M、reasoning は39.2Mでした。prompt は completion の約160倍です。
この比率は、Astra が短い質問に即答するモデルとして大量に使われているというより、長いコンテキストを与える処理で使われていることを示しています。とはいえ、キャッシュヒット率から請求額をそのまま算数で見積もるのは避けてください。
キャッシュの見方は、Claude Fable 5.1のキャッシュ経済学でも整理しています。
使い分けはバッチか対話か
バッチ・自動化では Astra の出力量が効く
同じ課題を大量に回す、テストを夜間に流す、ブラウザ操作や長時間のエージェント処理(AI が自分で手順を進める作業)を人が張り付かずに進める。こういう用途では、1課題21kという Astra の出力量がそのまま予算に効きます。
Index 全体を回した総額でも、Astra は$4,064、Fable 5.1 は$7,603でした。差額は$3,539です。API を繰り返し呼ぶ運用なら、知能スコアの2ポイント差より、出力が毎回どれだけ増えるかを先に見たほうが判断しやすいと思います。
対話では Astra を最初の候補にしない
画面越しにコードの修正を頼み、返事を見ながら次の指示を出す使い方では、最初の文字まで約7分43秒という数字が重く響きます。かといって Fable 5.1 も約4分27秒なので、こちらを「快適な対話モデル」と呼ぶのも無理があります。
迷うとしたら、Astra の安さを取って待つか、Fable 5.1 に$3.05多く払って待ち時間を少し縮めるか、という場面だと思います。ただ、Fable 5.1 でも返事が始まるまで数分かかるので、対話が中心なら最上位の2モデルだけで決めないほうがよいです。
GPT-5.6 Sol や Terra で足りないかを先に見る
AA の数値では、GPT-5.6 Sol は Intelligence Index 51で、Cost per Task は$1.25です。GPT-5.6 Terra は Cost per Task が$0.81でした。Astra の Index 55 や Fable 5.1 の57が必要な課題でなければ、最上位モデル同士で比べること自体が過剰になるかもしれません。
この2モデルの effort の組み合わせについては、GPT-5.6 Sol×Terra、コスパ最強のEffort組み合わせは?実測で検証 もあわせて読むと、今回の話とのつながりが見えやすくなります。
私なら Astra は「待てる自動化」に置く
私なら、GPT-6 Astra は人が返事を待たないバッチや自動化のキューに置きます。21k対64kという出力量の差は、1回分の請求では見落としやすくても、何百回、何千回と回したときに効いてくるからです。長い文脈を繰り返し扱う運用では、入力側の実効単価が低く出ている点も判断材料になります。
一方、Claude Fable 5.1 を選ぶ理由は、知能スコア57そのものではなく、個別の課題で Astra より短い待ち時間や別の出力の傾向が必要な場合に限ると思います。それでも約4分27秒は長いので、対話用と割り切って契約する前に、GPT-5.6 Sol の$1.25/task も比較に入れます。
今回の数字は、Astra が AA の(max)、Fable 5.1 が(max with fallback)設定で計測されたものです。最大設定同士の比較としては読めますが、effort を下げたときに費用や待ち時間がどう動くかは、この資料では確認していません。そこを自分の請求額へ当てはめるのは、まだ早いです。
判断する前に手元で確かめる数字
実際の運用に置き換えるときは、モデル名だけでなく、1タスクあたりの出力と、人が待つ時間を分けて記録してみてください。
- バッチ中心か対話中心か。人が最初のトークンを待つか
- 1タスクのcompletion・reasoningトークン数と、キャッシュされる入力の割合
- 最上位モデルのIndex差2ポイントに、1タスク$3.05を払う必要があるか
- AAの比較条件と自分のeffort設定が同じか。effort変更後の数値は未確認
出典と確認した範囲
本稿の数値は、2026年9月5日時点で Artificial Analysis と OpenRouter の公式ページに表示されていた第三者の計測です。私が回した計測ではありません。書いたのは確認できた事実だけで、費用比が2.19倍に収まる内訳などは、未実測の推測として分けて扱っています。AA の Intelligence Index v4.2 は、AA-Briefcase、GDPval-AA v2、τ³-Banking、Terminal-Bench v2.1、SciCode、Humanity's Last Exam、GDP.pdf、CritPt、AA-Omniscience、AA-LCR v1.1 の10評価を合成した指標です。
GPT-6 Astra の OpenRouter ページにはRELEASED Sep 5, 2026と表示されています。一方、同じページの Activity グラフには9月4日の利用トークンが記録されていて、当サイトの AI 年表では発表日を9月3日としています。そのため、掲載表示日と発表日を同じものとしては扱っていません。Claude Fable 5.1 のページ表示は Sep 1, 2026 です。
また、AA で Astra が載っていない評価項目があるのは、未計測という意味にとどまります。そこから弱さは推測していません。AA のハイライトカードにある blended price 7.7 も、$10/$50 との合成比率が確認できないため使っていません。
いずれも公式に相当する計測元の表示に基づく、2026年9月5日時点の値です。ページが更新されれば数字は動きます。
Fable 5.1 の effort 設定による変化は、Claude Fable 5.1のeffortカーブで扱っています。
この記事を書いた人
HW系エンジニアとして20年以上、10,000件を超える顧客訪問と2,000件を超える単独ソリューション実績。AIツールを使った個人開発やIoT農園など、Raspberry Piを使ったオートメーション化なども実践中です!エンジニア専門結婚相談所も運営中、ClaudeCodeで解決できない心の課題も解決いたします!
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