Qwen3.8-27B、16GBカードは買いか——実用下限は24GB
Qwen3.8-27Bを12/24/32GB GPUで実測。16GBに載らない理由と、買い替えの判断基準を整理します。
こんにちは。日中の暑さがまだ引かないうちは、重いモデルを GPU に載せるたびにカードの容量と発熱のことが気になってきますね。
先に答えを言うと、16GB のカードでは Qwen3.8-27B の実用的な標準の量子化量子化(Quantization)AI モデルの数値を少ない桁数で表し直して、ファイルと必要なメモリを小さくする手法。詳しく →(モデルを軽く圧縮する方法)は載りません。もっと軽い量子化なら短い会話くらいは動く可能性がありますが、画像の入力や会話の記憶(KV キャッシュ)まで含めて使うなら、実用の下限は 24GB です。実際に借りて測ると、24GB の RTX 3090 ではモデルが GPU に 100% 載り、借りたマシンによって毎秒 29〜50 トークン(t/s)出ました。12GB の RTX 3060 はモデルの 48% が CPU 側へこぼれて 6.84 t/s まで落ち、32GB の RTX 5090 も 100% 載りましたが、速度の記録は後で説明する理由で取り下げています。
迷うとしたら「安い 16GB で済ませるか、24GB まで一気に行くか」の一点だと思います。Qwen3.8-27B が目当てなら、16GB は節約というより、妥協を買う選択になりやすいです。12GB でのつまずき方は gemma4:12bはollamaで動かない — 12GB GPUでllama.cpp実測52t/sの最短ルート とつながる話なので、あわせて読むと見通しがよくなります。
16GB を阻むのは、モデル名ではなく Q4_K_M の実ファイルの大きさ
Qwen3.8-27B は 27B の dense モデル、つまり毎回すべての重みを使って答えるタイプで、文章だけでなく画像も扱えます。Hugging Face に置かれた GGUFGGUF(ggml Unified Format)llama.cpp 系のソフトでローカル LLM を動かす時に使う、モデルの保存形式。詳しく →(ローカル実行向けのモデルファイル形式)の実ファイルを見ると、実用の標準として扱いやすい Q4_K_M は 17.1GB でした。推定の式から出した数字ではなく、2026年8月18日に取得した実ファイルのサイズです。
16GB カードの実容量は 16 GiB なので、Q4_K_M は重みだけでも収まりません。IQ4_XS まで落とすと 15.7GB になって重みだけは入りますが、残りは約 0.3GB です。KV キャッシュの置き場がほとんどなく、画像を読むための視覚エンコーダも入りません。
ですから「16GB では動かない」と一言で片付けるのは正確ではありません。IQ4_XS で短いテキスト会話を試すことはできます。ただ、Qwen3.8-27B を標準的な量子化で使うという意味では、16GB は容量が足りません。
Ollama の既定のタグでは、視覚エンコーダの 931MB も乗ってくる
OllamaOllama(ローカルLLMランタイム)手元の PC でオープンウェイトの LLM を手軽に動かすための、無料のソフト。詳しく →(ローカルで LLM を動かす定番ソフト)の qwen3.8:27b は、本体が Q4_K_M で 18GB、視覚プロジェクタ(画像を読むための部品)が BF16 で 931MB です。合わせると、実際に置かれるデータは約 19GB になります。Unsloth の 17.1GB と Ollama の 18GB の差は、表記の丸めや、付随ファイルを含むかどうかの違いです。
この 931MB は、重みだけを並べた VRAMVRAMグラフィックボードに載っている、GPU 専用の高速なメモリ。詳しく →(GPU 側のメモリ)の表では見落とされがちです。画像を使わない場合でも、実測ではモデル全体の GPU 使用量が 16.2 GiB に達しました。16GB カードの実容量をわずかに超えていて、会話の文脈を 1 トークンも置かない状態でさえ余裕がありません。
Qwen3.8-27B は文脈の長さ 262,144 トークンに対応し、YaRN という拡張で 1M まで伸ばせます。ただし文脈を増やすほど KV キャッシュも膨らみます。今回の 16.2 GiB を「長文も余裕で使える容量」と読まないようにしてください。
12GB でも動くが、6.84 t/s まで落ちる
RTX 3060 12GB では、モデルの GPU 搭載率が 52% でした。使用量は 8.8 / 16.9 GiB で、残りの 48% は CPU 側に置かれています。その結果、温まった状態(warm)での速度は 6.84 t/s です。
24GB の RTX 3090 でいちばん遅かった 29.30 t/s と比べると、約 4.3 分の 1 です。6.84 t/s は人が文章を音読するくらいの速さに近く、Qwen3.8-27B が考えてから答える設定では、思考の 1,000 トークンだけで最初の一文字が出るまで約 2 分半かかります。「起動した」と「待たずに使える」のあいだには、かなりの距離があります。
12GB のカードを持っている人がまず確かめるべきなのは、読み込めるかどうかではなく、CPU へのはみ出し(CPU オフロード)を許容できるかです。コードの補完や短い質問をときどき投げる程度なら試せますが、答えを待つ時間まで含めると、ローカルで動かす意味が薄くなる場面があります。
24GB からは、モデルが GPU に 100% 載る
24GB の RTX 3090 は、4 台すべてで GPU 搭載率 100%、使用 VRAM は 16.2 GiB でした。採用した 3 台の速度は 29.30、45.46、49.70 t/s に分かれています。RTX 3090 をひとつの速度で語るのは危なっかしく、29〜50 t/s という幅で見るのが実用的です。
32GB の RTX 5090 も GPU 搭載率 100%、使用量 16.3 GiB でした。ただ、記録された速度は 1 枚の RTX 5090 では物理的に出せない値だったので、後の節で取り下げます。100% 載ること自体は確認できています。
GPU に全部載ったあとは、VRAM の容量だけで速度が決まるわけではありません。現に、同じ RTX 3090 でもマシンによって 1.7 倍の差が出ました。

断崖は16GBと24GBの間にある。容量が足りない側は、足りない分だけCPUへこぼれる
| GPU・環境 | VRAM | warm速度 | GPU搭載率 |
|---|---|---|---|
| RTX 3060 | 12GB | 6.84 t/s | 52% |
| RTX 3090(3台) | 24GB | 29.30〜49.70 t/s | 100% |
| RTX 5090 | 32GB | 取り下げ(下記) | 100% |
同じ RTX 3090 でも、借りたマシンで 1.7 倍違った
4 台の RTX 3090 は、どれも GPU 搭載率 100%、VRAM 使用量 16.2 GiB で同じでした。それでも、ブルガリアのマシンは 29.30 t/s、チェコの 2 台は 45.46 t/s と 49.70 t/s です。オランダのマシンはこれらを上回りましたが、その値は採用していません(理由は次の節で)。
モデルが GPU に収まっていても、GPU は CPU やメインメモリとデータをやり取りし続けます。CPU の世代が効いている可能性はありますが、採用できた 3 台のうち 2 台は CPU が分からず、相関を言えるだけの台数がありません。ここは「周りの環境で差が出る」までに留めておきます。
もうひとつ、RTX 3090 では起動直後(cold)の 18.52 t/s から温まった後の 29.30 t/s まで差が出ました。cold を 1 本だけ測ると、同じカードを 18 t/s 級として報告してしまいます。今回の速度は、cold の 1 本を捨て、warm の 2 本が ±10% 以内で一致した値です。
2 台分の測定値を取り下げた理由
公開後に検算したところ、2 つの値が 1 枚のカードでは物理的に出せないものだと分かりました。
生成の速さは、メモリの帯域(1 秒あたりに読み出せる量)で頭打ちになります。モデルのファイルサイズは 16.81GB なので、1 トークン生成するたびにこれだけ読み出す必要があります。RTX 3090 のメモリ帯域は 936GB/s ですから、理屈の上でも 936÷16.81=毎秒 55.7 トークンが限界です。RTX 5090(1792GB/s)なら 106.6 です。
記録されていたのは、オランダの RTX 3090 が 61.84 t/s、RTX 5090 が 134.33 t/s で、どちらもこの限界を超えています。実際には限界の 8〜9 割しか出ないので、超えること自体があり得ません。
原因は特定できていません。当時、借りたマシンに GPU が何枚見えていたかを記録していなかったからです。複数枚あればモデルを分けて帯域を足し合わせられるので、2 枚と仮定すると両方ともふつうの値に収まります。とはいえ記録が無い以上、推測の域を出ません。
そこでこの 2 つは採用せず、限界内に収まっていた 3 台だけで速度を示しています。以後の計測では GPU の枚数を記録し、理論上の限界を超えた値はその場で止める仕組みを入れます。
12GB は API より遅く、費用もほとんど変わらない
2026年8月18日時点の実際の単価で見ると、RTX 3060 12GB は 100 万トークンあたり $2.84 でした。OpenRouter で Qwen3.8-27B を API(ネット越しに使うサービス)として使うと $3.10 なので、自分の手元で動かしても費用の差はわずかです。そのうえ 6.84 t/s は、API でいちばん遅い提供元 io.net の 9 t/s を下回りました。
VRAM が足りないカードで粘ると、「遅い」と「安くならない」が同時に起きます。12GB をもう持っているから無料、とは限りません。待ち時間を作業時間として数えると、判断は変わってきます。
| GPU | 速度 | 100万トークンあたり | API比 |
|---|---|---|---|
| RTX 3060 12GB | 6.84 t/s | $2.84 | $3.10に近い |
| RTX 3090 24GB(最遅) | 29.30 t/s | $1.34 | 2.3倍安い |
| RTX 3090 24GB(最速) | 49.70 t/s | $1.02 | 3.0倍安い |
GPU を買うか借りるか、何年で元が取れるかは、使う量と購入価格で変わります。この話はローカルLLMのGPUレンタルと購入の比較に分けました。
私見:買うなら 24GB を最低ラインに
Qwen3.8-27B 専用で考えるなら、24GB が最低ラインです。RTX 3090 は環境による差こそ大きいものの、GPU に 100% 載せられます。16GB 帯には RTX 5070 Ti、RTX 4080 Super、RX 9070 XT のような現行の十万円級カードもありますが、Q4_K_M を載せる用途では容量が先に壁になります。
32GB なら、実測の使用量 16.2〜16.3 GiB に対して余裕が残ります。今回確認した 32GB 帯で一般に買える選択肢は実質 RTX 5090 で、業務用のカードまで含めればほかにもあります。速度を優先するなら 32GB、価格と容量の折り合いをつけるなら 24GB、という整理です。
手持ちのカード別に言えば、こうなります。
- 12GB: CPU へのはみ出しを前提にした検証用
- 16GB: IQ4_XS 以下で短いテキスト会話を試す用途
- 24GB: Q4_K_M を実用の範囲で使う用途
- 32GB: 速度と将来の余白を買う用途
27B クラスを動かすために 16GB カードへ買い替えるのは、避けたほうがよいと思います。
買う前に、同じカードを 1 時間だけ借りて確かめる
この記事の数値は、すべて Vast.ai で RTX 3060・RTX 3090・RTX 5090 を実際に借りて測ったものです。RTX 3090 なら時給 $0.14〜0.19、RTX 5090 でも $0.51 程度でした。数十万円のカードを買う前に、自分の使うモデルとプロンプトで速度を確かめられます。
ただ、借りるのにも起動待ちや空振りという別のコストがあります。借りる場合の実務はローカルLLMのGPUレンタルと購入の比較にまとめました。
上記は紹介リンク(アフィリエイト)です。実際に自分で借りて計測した結果に基づいて紹介しています。
VRAM が動くかどうかを分け、帯域やマシンの環境が速度を左右する、という一般論はその通りです。そのうえで、今回見るべき断崖は 16GB と 24GB の間にあります。もっと広い GPU 選びの整理は、Gemma 4のVRAMとGPU速度の実測記事に譲ります。
この数字が当てはまる範囲
今回の速度は、Ollama で qwen3.8:27b を使い、Qwen 系の思考を切った think:false で測った単発の生成の値です。別のランタイム、思考あり、長い文脈、画像入力、同時実行では変わります。
12GB の 6.84 t/s と、以前に別のモデル・別のカードで確かめた速度の落ち方の倍率は、同じ扱いにできません。モデルとカードの組み合わせで崩れ方が変わるので、今回の倍率をほかの 27B モデルへ広げて当てはめないでください。
測ったのは 2026年8月18日です。Hugging Face の Qwen3.8-27B GGUF の実ファイル、Ollama の既定のタグ、Vast.ai 上の RTX 3060・RTX 3090・RTX 5090 を確認しました。計測は cold の 1 本を捨て、warm の 2 本が ±10% 以内で一致することを条件にしています。VRAM の使用量は Ollama の/api/psで確認しました。
出典
- Qwen/Qwen3.8-27B
- unsloth/Qwen3.8-27B-GGUF:2026年8月18日取得
- Ollama qwen3.8:27b
- 自前実測:
scripts/runpod/benchmark-ledger.json、Vast.ai・Ollama、2026年8月18日 - OpenRouter価格ページ:2026年8月18日確認
参考リンク
この記事を書いた人
HW系エンジニアとして20年以上、10,000件を超える顧客訪問と2,000件を超える単独ソリューション実績。AIツールを使った個人開発やIoT農園など、Raspberry Piを使ったオートメーション化なども実践中です!エンジニア専門結婚相談所も運営中、ClaudeCodeで解決できない心の課題も解決いたします!
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