Ubuntu環境でRadeon 780M + Ollama ROCmを試した結果を、導入手順、速度、失敗しやすい設定、APUで動かすモデル選びまで整理します。
TL;DR: Radeon 780M(gfx1103)は HSA_OVERRIDE_GFX_VERSION=11.0.0 で Ollama ROCm が動きます。render グループ未反映・gfx1103 偽装・OOM の3点を抑えれば再現できます。5B 超モデルは iGPU と CPU の速度差がほぼなくなるため、常用モデルは 3B〜5B が現実的です。
先に線引きしておきます。
特に後者の人は、Radeon 780M を無理に選ぶより、別の GPU 構成を検討した方が早いです。/ranking?category=gpu で候補を見比べた方が判断しやすい場面もあります。
ここは先に書いておきます。iGPU は万能ではありません。
今回の環境では、5B 以上のモデルになると、iGPU と CPU の速度差がかなり縮まります。 厳密にはモデルや量子化、コンテキスト長で上下しますが、少なくとも「大きいモデルほど GPU にすれば明確に速い」とは言い切れません。
ここは実測を見て少し考え直しました。私は最初、iGPU なら多少は CPU より明確に勝つだろうと見ていましたが、Radeon 780M は“軽量モデルを気持ちよく回す”用途で光る、というのが実態に近いです。
つまり、Radeon 780M は「巨大モデルを回すためのGPU」ではなく、ローカルLLM入門〜軽量実用のためのiGPUと見た方が正確です。
最初の詰まりどころはここです。かなり地味ですが、かなり多い。
ROCm はユーザー権限まわりの条件が合っていないと、GPU が見えていても使えません。とくに render グループ が効いていないと、Ollama が起動しても GPU 利用に進まないことがあります。
正直、ここで30分くらい時間を溶かしました。ログを何度見返してもGPUが使われた形跡がなく、「もしかしてgfx1103自体がダメなのか」と疑い始めていたところで、原因はただの権限設定漏れだったとわかった時は、拍子抜けと安堵が半々でした。
この手の症状は、モデルのせいでも、Ollama のせいでもないことが多いです。権限の問題を最初に疑うのが正解です。
groups で所属を見て、見た目だけで終わらせないポイントは、設定しただけではダメということです。ログインセッションを張り直さないと反映されないことがあります。ここを飛ばして「まだ動かない」と悩む人が多いです。
この順番はかなり重要です。
2つ目が本題です。Radeon 780M の gfx1103 は、ROCm の公式サポート外として扱われることがあります。
ここで詰まると、ドライバは入っているのに GPU が使えない、あるいは起動時に弾かれる、という状態になります。
HSA_OVERRIDE_GFX_VERSION=11.0.0 を設定して、gfx1103 を偽装します。
これで「公式に見せかける」わけですが、要するに ROCm 側の判定を通すための実用的な抜け道です。きれいではないですが、現実にはここが突破口になります。
つまり、変数を置けば終わりではないです。Ollama をどう起動しているかで、反映範囲が変わります。
render グループと HSA_OVERRIDE を同時に通すための起動コマンドテンプレートはこれです。
sg render -c 'HSA_OVERRIDE_GFX_VERSION=11.0.0 PATH="$HOME/.local/bin:$PATH" ollama serve > /tmp/ollama-ws.log 2>&1 &'
sg render -c '...' で render グループを明示し、かつ HSA_OVERRIDE_GFX_VERSION=11.0.0 を同じコマンド内に入れる。tmux の再起動なしに両方を通す最短の形です。
この偽装は「長期の正攻法」ではありません。ですが、試作や検証には十分意味があります。
大事なのは、
を分けて考えることです。
未対応を未対応のまま押し切るより、どこまでが実験で、どこからが運用かを切り分けた方が判断しやすいです。
3つ目は、動いた後に来ます。これが厄介です。
GPU に乗ったから安心、と思ったら OOM(メモリ不足) で止まる。あるいは全体が重くなって、実質フリーズのように見える。iGPU は専用VRAMが潤沢なわけではないので、ここはかなり現実的な制約です。
実際にこれをやらかした時は、画面がそのまま固まり、何をやっても反応が返ってこなくなりました。「これはOSごと巻き込んだか」と一瞬身構えましたが、結局は電源長押しで再起動すれば直る、ただのOOMでした。なまじGPUに乗っている分、CPU単独運用の時より油断しがちで、ここは素直に「サイズを見誤った自分が悪い」と思うことにしています。
ここで勘違いしやすいのは、「GPU で動く = 大きいモデルも快適」と思い込むことです。Radeon 780M は、メモリ帯域や共有メモリの性質上、大きいモデルほど急に厳しくなることがあります。
このラインを先に知っておくと、「なぜ重いのか」で無駄に悩まずに済みます。
この手の検証では、いきなり最適化を狙うと失敗しがちです。順番は逆です。
最初から「何Bが最速か」を決め打ちすると、権限や判定エラーの切り分けが雑になります。先に通す。これが大事です。
Ollama の ROCm 利用は、すべての場面で CPU を圧倒するわけではありません。
実際に計測した数字を先に出します。
| モデル | iGPU(Radeon 780M) | CPU(Ryzen 8840U) |
|---|---|---|
| qwen3:1.7b | 27.3 tok/s | — |
| gemma4:e2b(5.1B) | 19.5 tok/s | 18.8 tok/s |
| gemma4:e4b(8B) | 9.9 tok/s | 10.0 tok/s |
qwen3:1.7b は iGPU で十分速いです。しかし gemma4:e4b(8B)になると iGPU が CPU に負けています。これが「5B の壁」です。
APU は iGPU と CPU が同じメモリ帯域を共有しているため、モデルが大きくなるほど帯域が食われて CPU と変わらなくなります。
7B 超を快適に回したくなったら、APU 単体では構造的に厳しいです。共有メモリの帯域がボトルネックなので、設定では埋まりません。どうしても大きいモデルを試したいときは、クラウドで高VRAMのGPUを時間単位だけ借りる手もあります。
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だからこそ、Radeon 780M の価値は「ベンチの数字」だけでは測れません。日常の待ち時間を少し削る、この用途で効いてきます。
このセットアップが意味を持つのは、次の人です。
逆に、次の人には不要です。
この線引きはかなり大切です。動くかどうかと使うべきかどうかは別の話です。
もし同じ環境で試すなら、最初に確認するのはこの3点です。
この3つを潰すだけで、原因不明の迷子になる確率はかなり下がります。
もし次の比較に進むなら、軽量モデルの選び方として gemma4:e2b と gemma4:e4b の比較も役に立ちます。モデルサイズの差が、Radeon 780M ではどこに効くかが見えやすいからです。
関連:
/ai/ranking?category=gpu今回の結論はシンプルです。
無理に持ち上げる話ではありません。ですが、条件が合う人にとっては、Radeon 780M はちゃんと使い道があります。
次にやるべきことは、闇雲に再インストールすることではなく、この3つの落とし穴を順に潰すことです。そこまで行けば、同じ環境の人でもかなり再現しやすくなります。
gfx1102(Radeon 680M など)や gfx1103 系は同様の手順が効く場合が多いです。HSA_OVERRIDE_GFX_VERSION の値は環境によって変わります。ROCm の公式サポートページで自分の GPU アーキテクチャを確認してから試してください。
この記事は Ollama v0.20.2 で確認しています。古いバージョン(v0.1x 台)は ROCm の認識まわりが異なる場合があるため、v0.20 以降を推奨します。
セッションを引き継いだ tmux や既存シェルには変更が反映されません。sg render -c '...' で起動するか、一度ログアウト・ログインしてから再試行してください。
この記事の実測値は以下の環境で取得しています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| CPU | Ryzen 7 8840U(Hawk Point) |
| iGPU | Radeon 780M(gfx1103, RDNA3 12CU) |
| OS | Ubuntu 24.04 / kernel 6.17 |
| Ollama | v0.20.2(ROCm版) |
| 共有VRAM | 15.8 GiB(システムRAMから確保) |
| 検証日 | 2026-04-04 |
速度数値はモデルの量子化・コンテキスト長・システム負荷によって変動します。目安として使ってください。
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