NVIDIAが開発した日本語特化ローカルLLM「Nemotron-Nano-9B-v2-Japanese」をUbuntuサーバー(RTX 4070 Ti)に実際にインストールして動かした実録。日本語品質・速度・VRAM使用量を正直に評価。
NVIDIAが2026年1月に公開した日本語特化9Bモデルだ。パラメータ数は9B(90億)で、家庭用GPU(8〜12GB VRAM)で動作できる規模に収まっている。
アーキテクチャが面白い。Llama系ではなく nemotron_h というMamba(SSM)とAttentionを組み合わせたハイブリッドアーキテクチャを採用している。推論時に英語で内部思考(chain-of-thought)を行い、日本語で回答する2段階構造だ。
この「考えてから答える」構造が、後で紹介するハマりポイントにもつながってくる。
Ollama公式ライブラリに nemotron-mini というモデルがある。名前が似ているので最初そちらを試した。これは完全に別物。
nemotron-mini は英語向けの4Bモデルで、日本語特化の Nemotron-Nano-9B-v2-Japanese とはアーキテクチャも目的も異なる。Ollamaで「Nemotron」と検索するとこちらが出てきてしまうので注意が必要だ。
今回のモデルのGGUFはHugging Face の mmnga-o/NVIDIA-Nemotron-Nano-9B-v2-Japanese-gguf から入手する。
GGUFをダウンロードして ollama create でモデル登録し、ollama run を実行すると——
{"error":"llama runner process has terminated: exit status 2"}
クラッシュする。「ここまで来てこれか」と思わず声が出た。ログを見ると nemotron_h アーキテクチャを処理しようとしたところでセグフォルト。
原因: nemotron_h(MambaハイブリッドSSM)はllama.cpp b6315以降でサポートが追加されたが、Ollama v0.16.3にバンドルされているllama.cppのバージョンがそれより古い。
ここで少し構造を整理しておく。Ollama は llama.cpp を内部エンジンとして使うラッパーツールだ。
llama.cpp(C++製 LLM 推論エンジン)
↑ 内部で使用
Ollama(モデル管理・API ラッパー)
| llama.cpp | Ollama | |
|---|---|---|
| 新アーキテクチャ対応 | 最新(先行対応) | やや遅れる |
| モデル管理 | 手動(GGUF 直接指定) | ollama pull で自動 |
| Web UI | 内蔵あり | なし(別途 Open WebUI 等が必要) |
新しいアーキテクチャへの対応は llama.cpp 本体が先行し、Ollama へのバンドルには数週〜数ヶ月のラグが生じることがある。今回はそのラグにハマった形だ。今後も新アーキテクチャが登場するたびに同じパターンが起きる可能性がある。
解決策: llama.cpp の最新ビルドを直接使う。
GitHubからLinux向けVulkanビルドをダウンロードする。Ubuntu + NVIDIA GPUでもVulkan経由でGPU推論が可能だ。
# Vulkanビルドをダウンロード
curl -fsSL https://github.com/ggml-org/llama.cpp/releases/download/b8133/llama-b8133-bin-ubuntu-vulkan-x64.tar.gz \
-o ~/llama-vulkan.tar.gz
tar -xzf ~/llama-vulkan.tar.gz -C ~/llama-vulkan/
# GGUFモデルをHugging Faceから取得(Q4_K_M: 6.1GB)
# mmnga-o/NVIDIA-Nemotron-Nano-9B-v2-Japanese-gguf から入手
# サーバー起動
cd ~/llama-vulkan/llama-b8133
export LD_LIBRARY_PATH=$(pwd)
./llama-server \
-m ~/nemotron-models/NVIDIA-Nemotron-Nano-9B-v2-Japanese-Q4_K_M.gguf \
-ngl 35 --port 8088 --host 127.0.0.1
注意: 展開先のパスにライブラリが含まれているので、実行時に
LD_LIBRARY_PATHの設定が必要。ポート8080はGNOMEのIME(mozc_server)が使用中の場合があるため8088等に変更すること。
起動すると RTX 4070 Ti が Vulkan で認識される。
ggml_vulkan: 0 = NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti | fp16: 1 | bf16: 1 | matrix cores: NV_coopmat2
main: server is listening on http://127.0.0.1:8088
ブラウザで http://127.0.0.1:8088 を開くとWeb UIが立ち上がる。入力欄の右下にモデル名が表示されていれば正常にロードされている証だ。


これが一番わかりにくかった。APIで max_tokens=200 を指定して叩くと、content が空で返ってくる。
モデルの構造が原因だ。このモデルは回答前に**英語で内部思考(reasoning)**を行う。思考トークンも max_tokens の消費量に含まれるため、200トークン程度だと思考だけで枠が埋まって回答が空になってしまう。
// NG: max_tokens=200
{"content": "", "reasoning_content": "The user asks to summarize...(長い思考)"}
// OK: max_tokens=1500以上
{"content": "Ollama は...", "reasoning_content": "..."}
max_tokens は 1500 以上を推奨。逆に言えば、reasoning_content に思考プロセスが全部見えるので、それはそれで面白い。
Web UIでは「Reasoning」バーをクリックすると英語の内部思考が展開される。思考が英語で行われ、回答だけ日本語になっているのが視覚的に確認できる。

4つのプロンプトで実際に試した。
「日本語の要約をしてください:Ollama は Llama や Mistral などのオープンソース LLM をローカルで動かすためのツールです。」
→ 簡潔かつ正確にまとめてくれた。 文体は丁寧体で読みやすい。翻訳くさい表現がない。
「Pythonで簡単なWebスクレイパーを書いてください。コメントは日本語で。」
→ BeautifulSoupを使ったコードを、各行に自然な日本語コメント付きで生成。「# HTMLをパース」「# タイトルを取得」といった、機械的でなく人が書いたようなコメントが出てきた。

「自作PCのGPU選びについてアドバイスをください。予算は5万円です。」
→ RTX 3060 / RX 6600 の比較をMarkdown見出し・箇条書きで整理。価格・スペック・注意点まで網羅。実用的な回答品質だと感じた。

「日本語能力がどれくらいか知りたい。500文字ぐらいの童話を考えて」
→ 「小さなねずみのヒナ」が川のほとりで光の玉を使い、森の動物たちと力を合わせて洪水を乗り越える物語を生成。起承転結があり、「光の玉」「水の精」といった語彙の選択も、日本の童話らしい空気感が出ている。

全体的に「翻訳くさい日本語」がない。文末表現も自然で、日本語ネイティブが書いたような文章が出てくる。これは正直、想定より良かった。
| 指標 | Vulkan | CUDA |
|---|---|---|
| トークン生成速度 | ~10 tok/s | ~63 tok/s |
| VRAM使用量 | ~4.5GB | ~6.7GB(全層GPU) |
| バックエンド | llama.cpp Vulkanビルド | llama.cpp CUDAソースビルド |
| 1応答あたりの時間 | 30〜150秒 | 5〜25秒 |
| モデルファイルサイズ | 6.1GB(Q4_K_M) | 6.1GB(Q4_K_M) |

VRAM 4.4GBは思ったより少ない。RTX 3060(12GB)でも余裕で動く計算だ。ただしVulkan推論は遅い。10 tok/sは会話が成り立つ遅さではあるが、快適とは言えない。
CUDAビルドに切り替えると話が変わる。Web UIの速度カウンターに64.32 t/s(1,298トークン・20秒)が表示された。Vulkanとは別次元の速さだ。

CUDAビルドではVulkanの3〜6倍が出る。llama.cppのCUDA対応ビルドはLinux向けの公式配布がなく、現状はソースからのビルドが必要だ(cmake -DGGML_CUDA=ON)。時間のある人はそちらを試す価値がある。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 日本語品質 | ★★★★★ 非常に自然・実用的 |
| 推論速度(Vulkan) | ★★☆☆☆ 遅い |
| 推論速度(CUDA) | ★★★★☆ 64 tok/s — 実用的 |
| セットアップ難易度 | ★★★☆☆ Ollama未対応・llama.cpp手動セットアップが必要 |
| VRAM効率 | ★★★★☆ 4.4GB(Q4_K_M)でRTX 3060以上なら動く |
| 「思考が見える」体験 | ★★★★★ reasoning_contentで考え方が追える |
Ollamaで一発起動できないのは難点だが、それを差し引いても日本語品質は本物だ。9Bクラスで2026年2月時点の最注目選択肢の一つだと思う。
「動かすのに手間がかかる」は初回だけの話で、一度セットアップすれば後は問題ない。クラウドAPIに日本語の機密テキストを投げたくない用途に特に向いている。
Q. WindowsやMacでも動きますか? llama.cppにはWindows/Mac向けビルドも存在します。ただし本記事はLinux(Ubuntu)+Vulkanの環境での検証です。Macの場合はMetal推論が利用可能で、より高速に動く可能性があります。
Q. Ollama対応はいつになりますか? 不明です。nemotron_hアーキテクチャのOllamaサポートはllama.cpp側では追加済みですが、Ollamaへのバンドルはバージョン更新を待つ必要があります。
Q. CUDA推論にするにはどうすればいいですか?
llama.cppをCUDAオプション付きでソースビルドする必要があります(cmake -DGGML_CUDA=ON)。RTX 4070 Tiならサポート済み。ビルドに慣れている人向けです。
Q. 「推論の思考」が英語で出るのは仕様ですか? はい、仕様です。このモデルは英語で考えてから日本語で答える設計です。reasoning_contentを見ると思考プロセスが追えるので、回答の根拠が確認しやすいというメリットもあります。
Q. PDFはアップロードできますか? テキスト付きのPDFはllama.cpp Web UI経由でアップロード可能です。ただし画像のみのPDF(スキャンPDF)は読み取れません。その場合、モデルは「OCR処理済みのテキスト版を提供する」「画像を個別に送信する」「テキスト部分があれば抽出する」の3つの代替案を丁寧に提示してくれます。

VRAMは8GB以上あれば Q5_K_M(7GB)も動く。12GB以上なら余裕だ。GPUランキングでVRAM別の製品を確認できる。AIワークロード別のスペックはAIワークロード一覧も参考にしてほしい。
情報の鮮度: この記事は 2026年2月時点の情報をもとに執筆しています。
HW系エンジニアとして20年以上、10,000件を超える顧客訪問と2,000件を超える単独ソリューション実績。AIツールを使った個人開発やIoT農園など、Raspberry Piを使ったオートメーション化なども実践中です!エンジニア専門結婚相談所も運営中、ClaudeCodeで解決できない心の課題も解決いたします!
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