ACEStep 1.5をRTX 4070 Ti 12GBで実際に動かした記録。CUDA graphバグの修正からJ-Pop・Lo-fi・Rock・Ambient 4ジャンルの生成実験まで、数字ありで正直に書く。
「AIで音楽が作れる」という触れ込みのツールは、もう数え切れないほど出てきた。クラウドで動くものがほとんどで、月額を払えば生成し放題、無料枠を使い切ったら待て——という構造が多い。
BlogGemini 3.1フィーバーの陰で、Googleがひっそり仕込んでいたもの——Lyria 3「画像から音楽生成」を実際に触ってみたGemini 3.1が注目を集める2月、Googleはもうひとつの新機能をひっそりリリースしていた。AI音楽生成「Lyria 3」——桜と懐中時計の写真から「Two Rings Forever Yours」が生まれるまでを実体験レポート。ベストプラクティスからWorkspaceユーザーの制限まで徹底解説。→を試したときも同じ印象だった。クオリティは確かに高い。でも「自分のGPUで、制限なく、何度でも」という感覚はない。
ACEStepはそこが違う。オープンソース、ローカル動作、無料。気になっていたので本腰を入れて試した。
Stepping Stone Labsが開発したオープンソースの音楽生成AI。バージョン1.5では「5Hz LM」という言語モデルが追加され、歌詞を渡すと構造(BPM・キー・尺)を自動推定してから音楽を生成する仕組みになった。
入力するのは2つだけ。
jpop, female vocal, piano, emotional のような自由記述[verse] [chorus] の構造タグ付きテキスト歌詞なしでもインスト曲が作れる。歌詞を入れると、それに合わせたボーカル付きの楽曲が生成される。これが最大の特徴だ。
手元のAIサーバー(RTX 4070 Ti 12GB)に既にインストール済みだったので、起動から始めた。uv を使ったパッケージ管理で、初回以外は start_gradio_ui.sh を叩くだけでGradio UIが立ち上がる。

UIは日本語表示に対応していて、「音楽キャプション」「歌詞」「インストゥルメンタル」と並ぶシンプルな構成だ。モードは Simple / Custom / Remix / Repaint の4種。今回はCustomを使った。
ComfyUIと同居しているサーバーだったので、起動前にComfyUIを落としてVRAMを12GB近く空けた。起動後のログを見ると、モデルのロード構成はこうなっていた。
DiT model: acestep-v15-turbo → cuda (persistent)
5Hz LM: acestep-5Hz-lm-0.6B → CPU offload (auto)
VAE: on-demand CUDA swap
text_encoder: on-demand CUDA swap
KV cache: 1.18GB
12GBのGPUに対して「20GB未満はCPUオフロード自動有効」という判定が入り、モデルが都度swapされる設計になっている。
プロンプトを入れて生成ボタンを押すと、エラーで落ちた。
RuntimeError: Offset increment outside graph capture encountered unexpectedly.
ログを追うと、5Hz LMが nanovllm 経由でCUDA graphをキャプチャした後、PyTorchの torch.multinomial がグラフ外で呼ばれて死んでいる。環境変数でCUDA graphを無効化しようと2〜3種類試したが、どれも効かなかった。
ここでClaude Codeにログを渡して聞いた。正直に言うと、自分でコードを読んで特定できたかは微妙なところだった。
返ってきた答えは「llm_inference.py の564行目、1行変えてください」。
# 変更前
enforce_eager_for_vllm = bool(is_rocm) # ROCMのみTrue
# 変更後
enforce_eager_for_vllm = True # CUDA graphキャプチャを無効化
変えたら動いた。所要時間5分。torch 2.10とnanovllmの組み合わせで起きる互換性バグで、NVIDIA環境でも enforce_eager=True が必要だったというだけの話だ。
修正後、4種類のプロンプトで生成した。1回の生成でサンプルが2本出る(seed値が別々)ので、毎回2択で選べる。

キャプション: jpop, female vocal, piano, strings, emotional, ballad, slow
歌詞は夜の街をテーマにした日本語の4セクション構成を渡した。LMが推定した結果がこれ。
| 項目 | LM推定値 |
|---|---|
| BPM | 88 |
| キー | C# major |
| 尺 | 143秒(約2分23秒) |
| DiT生成時間 | 2.07秒 |
2分半近い楽曲が、2秒で生成された。歌詞のタイミングも概ね合っていて、日本語がちゃんと「歌われている」。
修正前は vocal_language: unknown のまま生成していたので、歌詞を読み飛ばしたり発音が崩れる問題があった。LMが動くようになったことでBPM・タイミング・構造が正確になり、発音が大幅に改善した。ログ上は今もunknownだが、構造が合えばここまで歌えるという発見だった。
キャプション: lofi, hiphop, chill, rainy night, jazz samples, vinyl crackle, mellow beats, 75bpm
歌詞: なし
| 項目 | LM推定値 |
|---|---|
| BPM | 34 |
| キー | B major |
| 尺 | 95秒 |
| DiT生成時間 | 1.23秒 |
J-Popより約0.8秒速い。歌詞のembedding処理が省かれる分だけ速くなる。
指定が75bpmなのにLMが34bpmと判断した点は面白い。「LofiはハーフタイムのBPMで考える」という解釈をしたらしい。実際に聞くとテンポ感はLofiとして自然だった。
キャプション: rock, male vocal, electric guitar, heavy drums, aggressive, stadium rock, energetic
英語の反骨精神をテーマにした歌詞を渡した。
| 項目 | LM推定値 |
|---|---|
| BPM | 110 |
| キー | D minor |
| 尺 | 135秒 |
| DiT生成時間 | 1.89秒 |
英語は vocal_language: unknown でも発音が自然だった。英語が学習データの主体なので、unknownでもほぼ英語として処理される。ギターのアグレッシブさも指定通りで、サビで音が厚くなる展開も出た。
キャプション: ambient, atmospheric, forest, morning, birds, light piano, slow evolving, peaceful, 60bpm
| 項目 | LM推定値 |
|---|---|
| BPM | 67(指定は60) |
| キー | C major |
| 尺 | 48秒 |
| DiT生成時間 | 0.59秒 |
0.59秒。これが一番速かった。尺が48秒と短かったこともあるが、インストでシンプルなタグ構成なら生成は一瞬だ。
出てきた音は、医院や待合室で流れていても違和感のないヒーリング系だった。ピアノと環境音が重なる静かな仕上がりで、これが0.59秒で出てくるのはさすがに驚いた。

| ジャンル | 歌詞 | BPM | キー | 尺 | DiT速度 |
|---|---|---|---|---|---|
| J-Pop | 日本語 | 88 | C# major | 143秒 | 2.07秒 |
| Lo-fi | なし | 34 | B major | 95秒 | 1.23秒 |
| Rock | 英語 | 110 | D minor | 135秒 | 1.89秒 |
| Ambient | なし | 67 | C major | 48秒 | 0.59秒 |
VRAM使用量は生成中に最大8.10GBだった。12GBカードで動かす分には余裕がある。
クラウドサービスと比較したときのACEStepの立ち位置は明確だ。
| 項目 | ACEStep | Suno / Udio |
|---|---|---|
| 費用 | 無料(電気代のみ) | 月額プランあり |
| 生成制限 | なし | プランによる |
| 著作権 | 自分で判断できる | 利用規約次第 |
| 速度 | GPU性能次第 | サーバー依存 |
| 日本語 | 動く(要調整) | 対応済み |
| セットアップ | 必要 | 即使える |
クラウドの方が手軽なのは事実だ。ACEStepはセットアップが必要で、LMのバグを自分で直す場面もある。その代わり、制限なく使い続けられる。
GPUのVRAM要件はGPUランキングで各モデルのスペックを確認できる。最低8GB、快適に動かすなら12GB以上を目安にしていい。
使える。ただし「誰でも即使える」ではない。
セットアップの手間、環境依存のバグ対処、日本語発音の調整——これらを受け入れた上で使うものだ。その引き換えに、制限なく、自分のGPUで、著作権を気にせず音楽を生成できる。
日本語対応は「ほぼいける」レベルだった。完璧ではないが、歌詞の意図は伝わる仕上がりになった。ここまで来るとは思っていなかった。
4ジャンル試した中で一番印象に残ったのはAmbientだ。「医院の待合室で流れていても違和感ない」という感想が自然に出る音が、0.59秒で生成される。これを「すごい」と言っていいのかどうか、少し考えてしまった。
すごいのは間違いない。ただ、自分でそれを口にすることに、どこか慣れてしまっている自分もいる。AIに驚き続けている間に、驚く感覚が少しずつ摩耗してきた。これが続くのだとしたら、それはそれで奇妙な時代だ。
情報の鮮度: この記事は2026年3月時点の情報をもとに執筆しています。ACEStep 1.5使用、RTX 4070 Ti 12GB環境での検証です。
HW系エンジニアとして20年以上、10,000件を超える顧客訪問と2,000件を超える単独ソリューション実績。AIツールを使った個人開発やIoT農園など、Raspberry Piを使ったオートメーション化なども実践中です!エンジニア専門結婚相談所も運営中、ClaudeCodeで解決できない心の課題も解決いたします!
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